先輩が笑顔で呼んでくる。

『お、お邪魔します。』

緊張するなぁ…。

そんなこんなで勉強会がスタート。

時々、先輩の手が動いているのが見える。

先輩のノートをちらっと覗くと、綺麗な文字が見えた。

わ、先輩の字、綺麗。

…蓮とは大違い。


30分ぐらいたった頃、下の階からお母さんが『蓮~、飲み物取りに来てー!』と蓮を呼んだ。

『私行くよ。』

私が問題を解きながらそう言うと、徳島先輩が

『私も切りいいし蓮と行ってくるわ。乃蒼ちゃんはやってていいよー。』

と言ってくれた。

優しいな…

…じゃなくて、一ノ瀬先輩と二人っきりになるじゃん。

なんか話しかけるのも気が引けるので、黙々と問題を解いていると、隣から腕が伸びてきた。

「……ここ、間違ってる。」

先輩が指をさしたところは、私の苦手な範囲だった。

『あ、教えてくれてありがとうございます。この辺が苦手で…。』

私が苦笑いしながら言うと、先輩は

「よかったら、教えようか?」

と言ってくれた。


『え、先輩の勉強の邪魔じゃないですか?』

「大丈夫だよ。今から違う教科やろうと思ってたし。」

爽やかに笑うと、先輩は私の近くに来て耳元で

「あと、今は蒼生って呼ぶこと」

と言ってきた。

さすがに急だったので驚いて

『いや、無理ですよ…。』

と言うと、先輩は少し不機嫌になった。