なんなの?って先輩はちょっと怒ったように言った。

…おにぎりちゃんと食べてくれたんだ。よかった。

っじゃなくて…!

『先輩、私の手を放してください。』

「無理、離さない。」

真剣な顔をした先輩と目が合う。

そんな事されたら…。

「…って、え?!なんで泣くの?ご、ごめん。腕痛かった?」

『ち、違くて…。』

どうしよう、涙が全然とまらない。

「…こっちきて。」

突然、先輩に腕を引っ張られて驚いたけれど、大人しくついて行くと小さな喫茶店があった。

「いらっしゃい!お、蒼生くんじゃないか。」

「お久しぶりです。お元気ですか?」

先輩が店内にいた、髭のよく似合うおじさんに話しかけた。

「私は元気だよー。そちらのお嬢さんは?」

『え、えっと…鈴木乃蒼と申します。』

するとその人はニコッと笑って

「私の名前は浦賀敏久と言います。みんなからはマスターとか、敏久さんとかって呼ばれてます。まあ、好きなように呼んでください。」

と言った。

『よ、よろしくお願いします。』

「では、お好きな席へ。」

先輩と一番奥の方の席に座る。

「蒼生くんは、いつものかな?」

「はい。この子も同じので。」

いつものとは?そんなに頻繁にきてるのか。

「じゃあ、ちょっと待っててね。」

そう言ってマスターは奥に消えていった。

先輩と私の間には不穏な空気が流れ、どうしようもない沈黙が続く。

うぅ、すごく気まずい…。