乃蒼side

あれ以来、朝練に行かなくなった。

…先輩に会うのが気まずいから。

だけど、おにぎりは作って体育館の入り口に置いておくようにした。

先輩、ごめんなさい…。


校内でも会うのが怖くて、先輩の声が聞こえたり、姿が見えると逃げるようにしていた。

部活にはさすがに迷惑がかかると思ったので行ったけれど、目を合わせないようにしていた。

『乃蒼、何キョロキョロしてるの?大丈夫?』

『なんかあった…?話聞くよ?』

校内を移動中、雪ちゃんと楓にそんなことを言われたが、『大丈夫だよ!』と答えておいた。

…2人にはまだ過去のことを話せていない。


そして木曜日になった。

部活の定休日。普段ならみんなで出かけるところだけれど今日は違う。

先輩に会わないよう裏門から帰らなければ。

『じゃあ、2人ともバイバイ。』

『また明日ー。』  

『うん、ばいばーい。』

2人に別れを告げてから裏門に向かう。


ゆっくり顔を出して、人がいないことを確認する。

『よし、誰もいない…。』

ガシッ

え…?

誰かに腕をガッチリと掴まれる。

「誰もいない、だって…?」

『せ、先輩?!な、なんでここにいるんですか?!』

そこには…一ノ瀬先輩がいた。

「それは、乃蒼ちゃんが逃げるからでしょ?はぁ、やっと捕まえた。朝練来ないし、目逸らされるし、おにぎりは置いてってくれるし。」