蒼生side

乃蒼ちゃんがサーブを打った時、中学の県選で見かけた女の子を思い出した。


女子の試合の応援のために観覧席に座ってた時、隣のコートで行われていた試合に目を奪われた。

1人の女の子が放ったサーブはネットを超え、ラインギリギリに落ちる。

…あの子すごいな、あのサーブは男子でも打つのが難しい。

結局、自分のチームの応援を忘れて見入ってしまった。


今、乃蒼ちゃんが打ったサーブはとてもよく似てた。

…いや、そのものだった。

そう思ったら体が全く反応しなかった。

…いや、出来なかったのかもしれない。


俺は新しいボールを持ちに行く乃蒼ちゃんをただただ見つめていた。

乃蒼ちゃんと目が合う。

すると、とても嬉しそうな顔をしていたのに、突然血の気が引いたような顔になり謝りだした。

「っ乃蒼ちゃん!大丈夫?!」

そう言ったが乃蒼ちゃんには、俺の声が届いていなかった。

『っっっごめんなさい!!』

そう言って走って体育館から出ていってしまう。


俺は追いかけることもできずただ呆然と立っていた。

何が起きたんだ?どうして謝り出したんだ?

…俺、なんかしたのかな。


俺の疑問は誰にも届くことなく消えていった。