私は昔、サーブとアタックが得意で、それを認めてもらえて県選に選ばれた身だった。

なので、サーブを打ってと頼まれて少し舞い上がってしまった。


先輩に言われたところに向かってサーブを打った。

すると、先輩は驚いたように目を見開いたまま動かなかった。私が打ったボールはラインギリギリのところに落ちていった。

…久しぶりにやると楽しい。

そんなふうに感じながら先輩のことを気にせず、新しいボールを手に取って先輩の方を向いた。

すると先輩が呆然として立っていた。


この時、先輩の顔を見て同級生たちの顔が浮かんだ。

あ、やっちゃった…!

そう思った瞬間、耳の奥で声が響く…。


『あんたさ先生に褒められたからっていい気にならないでくれる?超下手くそだから。』

『先輩差し置いて何調子のってんだよ、下手くそ。』

『うわー、かわいそ。……いい気味。』


クスクスと笑い声が聞こえた気がした。
      
…………………。


いつのまにかボールを手放して、自分の耳を塞いでいた。

『ごめんなさい、ごめんなさい、お願い、許して…。』

嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ…。

「ーーー、ーーーーー?!」

先輩が何か言っているが聞こえない。

『っっっごめんなさい!!』

私は耐え切れなくて体育館から走って出た。

「乃蒼ちゃん!!」


先輩に名前を呼ばれたが、振り返らずにとにかく走った。

先輩は追いかけてこなかった。

私は非常階段のところまで行って我に返った。


先輩、ごめんなさい…。