先輩は耳を赤くしながらそう言った。

私もつられて顔が熱くなる。

2人だけの秘密、か…。なんだか嬉しい。でも秘密にする必要なんて…

『…なんで秘密にしてるんですか?』

そう聞くと先輩はギクッとした。

あ、聞いちゃダメなやつだったかな…?

「⋯最近みんな腕上がってきてるじゃん?大事な試合も近いし追いつきたくてさ。秘密じゃないと意味ないでしょ?」

そっか…。先輩そんなふうに思ってたんだ。

今更だけど、誰よりも上手な訳がわかった気がする。

『その気持ち分かります。周りにどれだけ上手いって言われても、自分はそう感じないですよね。』

私もそうだった…。誰になんと言われても、ただ上手くなりたかった。

『…わかりました。私に先輩のお手伝いさせてください。』

「やってくれるの?嬉しい。」

喜んでいる先輩を見て私まで嬉しくなる。

「じゃあ、明日からよろしく!あと…。」

『はい?』

「…蒼生って呼んでよ。朝だけでいいからさ。」

驚いて先輩を見ると、耳が真っ赤になっている。

『わ、わかりました…。』

…やばい。私、心臓持つかな?

そうやって、2人きりの朝練が始まった。



それから一週間ぐらい経った頃。事件は起こった。

あれは、先輩に

「今日はサーブを拾う練習したいからラインギリギリのサーブ打ってもらえる?」

といわれたので、サーブを打った時だった。