…まぁ、どうせ俺たちを見たいだけだろ。

そんな軽い考えはすぐに打ち砕かれた。

あの子は俺らに見向きもせず、黙々と仕事をしている。

しかも必要なものはすでに準備されている。…すごい手際がいい。


あの子、次に何すればいいのか全てわかっているのか…?

用意してあったスポドリも飲んでみたら、案外ちょうどいい濃さだったし…。


しかも、さっき突き指したやつが

「おい、これ見ろよ。すごくねーか。」

って言ってテーピングされているところを見せてきた。

「あの子がやると全然痛くない上に、しっかり固定されて動かないんだ。しかも“どうすればこの指を守りながら、他の指に負担がいかないか”アドバイスしてくれてさ。」

…それはすごいな。

「そして極めつきには『あまり無理しないでくださいね。』って言ってくれたんだよ。俺、もう惚れたわ。」


惚れたかどうかはどうでもいいけど、巻かれていたテーピングは確かに上手く固定されていた。

周りのやつも感心してるようだ。


すると、今まで静かだった蓮が隣に来て

「あれが俺の妹。前にちょっとだけ話したことあるだろ?」

とコソっと耳打ちしてきた。蓮の顔はなんだかうれしそうだった。


あー、なんか似てるかも。


それからはちゃんと練習していたが、ちょっと話しかけてみたくなってきた。

そっと仕事中のあの子に近づいて、話しやすいようにかがんで声をかけた。

「マネージャーさんっ。」