「バレー部に遊びに来てくれると思って待ってたのにぃ〜。お兄ちゃん、寂しいっ!」

『…いや、そういうの先に言ってくれない?』


てか、バレーなんてもうやる気ないし…。あんなことになるぐらいなら。

「えー、言わなくても来ると思ったんだもん。ねぇー来てよぉー。1分だけでもいいからさぁ。」

駄々をこねる小学生みたいな言い方をしてくる。

あ、そうだ。精神年齢は5歳だったわ。

しかもこの言い方をすれば、私が絶対断らないってわかっててやってくるからさらにタチが悪い。

『えぇぇ…。』

見に行ったらまたやりたくなっちゃうじゃん…。

「久しぶりに俺のプレー見なよ?アドバイスとかもして欲しいし。そういうことしてくれる人いなくてさ。明日感想聞くからな?」

こうなるともう手がつけられない。

こいつはバレーのことになると野生動物になる。

やるって決めたらもう止まらない、イノシシのような男だから。


あ、いい意味でね?

『はいはい、行きます、行きますー。』

「よし!言ったな?ちゃんと聞いたからな!」

そう言って嬉しそうに皿を片付けっていった。



「…はぁ。俺はもう1回、お前に楽しくバレーやって欲しいだけなんだよな…。」

ボソッとこぼれた兄の本音が私の耳に届くことはなかった。


木曜日になった。

今日はどこの部活を見に行こうかと思いながら雪ちゃんに話しかける。

『雪ちゃん、今日はどこ見にいく?』

すると雪ちゃんはポカーンとした顔をした。

あ、あれ?私なんか変なこと言った感じ…?

すると突然楓が笑い出した。雪ちゃんもくすくす笑っている。

『え、なんで笑ってるの?』

さすがの私でも戸惑ってしまう。