詩穂は、その場にとどまり、さて、どうして伝えたものか・・・と思案していた。
美術部に行く途中の夏樹の発言以来、幸一の顔をまともに見れてなかった。
勇気を出して、時々帰って行く幸一に、バイバイと幸一に挨拶しても、ぱっと顔をそらされてしまって、バイバイと小声で帰ってくるので、なんか、調子が狂う。
なんだ?この気持ち。
「こんな所で何してるの?」
詩穂の前の席の藤井翔吾が声をかけてきた。
詩穂のクラスは、今の席が良いと、未だに席替えをしていない。
「翔吾こそ、何してるの?」
「横田先生に用事があって。」
翔吾の所属するサッカー部の顧問の先生が横田先生。
「へー。」
「詩穂は?」
「ん?散歩?よく分からないんだけど、帰ろうと思ってたんだけど、考え事して立ち止まった。」
「そう、ホント、よく分からんね。オレも今から帰るから、一緒帰ろう?」
「うん。」
詩穂は翔吾とならんで、教室に荷物を取りに戻った。
教室に戻ると幸一が1人教室に残っていた。