5日目の放課後。
小松が来る前に、幸一の隣の席に移動した詩穂は、廊下を見ていた。
「どうしたの?」
幸一が聞いた。
「あ・・・うん。なんか人の気配がするっていうのかな。」
詩穂はなんでもないと笑って教科書を開いた。
ノートを手に取りながらパラパラとめくって、
「なんかさ、自分のノートじゃないみたい。」
と幸一にノートを開いて
キレイに書いてあるというよりは、使い込んだノートという印象がある。
「そもそも1冊きちんとノートがあるっていうのが、すごいよね。」
そう言いながら、幸一も自分のノートをペラペラとめくった。
詩穂も幸一も、数学や国語など、書き込みにくいものは別にして、割と、教科書兼ノートとして、教科書に書き込みをしている事が多い。
クラス全体を見ても、教科書兼ノートにしている人と、1教科に対してノート1冊もっている人の割合は同じくらいだろう。
ノート1冊に全教科がおさまっている人が大半をしめている。
ついでに言うと、机の中に教科書が入っている人も珍しい。
扉のない単なる箱という形のロッカーが教室の後ろについており、そこにクラスほぼ全員が教科書をつめていた。
机の中は、空かマンガ本が入っていた。
机の上には、ペン立てを置いて筆記用具を入れている人がクラスの1割から2割いた。
そのくらい、勉強とはかけはなれていた。
話をしているうちに、小松がやってきて、英語の勉強を始めた。
同じように2時間くらい勉強した。
暗くなった廊下を歩きながら、幸一が言った。
「あと2日だねぇ。」
「ねぇ、これで点数ボロボロだったら笑える。」
「笑うだけじゃすまないよ。」
「え?」
「小松先生にボロボロにされる。」