11月・・・久しぶりに高校の学園祭へ行った。
進学校は、春にする事が多くなった。・・・今は進学校のほとんどが春なのかな・・・。
商業校の我が母校は、今も昔も文化の日が学園祭。

3年3組の前で足が止まる。
私が最後に使ったクラス。
教室はがらんとしていた。
どっかの部活が展示に使っているようだが、見張り番すらいなかった。
・・・部かどうかも分からないが、クラス展示の場合、
見張り番をきっちり決めるよう先生が指示するだろうなあ、
その見張り番がいないのだから、どっかの部だろう・・・その程度。
クラスの真ん中に何かオブジェのようなものがあるが、
美術部の作品にしてはお粗末すぎる。

黒板の前が一段高くなっていて、私はよくここに座っていた。
それも、決まって黒板に向かって左側。
同じ場所に座ってみる。
当たり前だった学校生活が、何気ない日常が、光のようにあふれてくる。
昔は、ここに座って未来をみた。
今ここから見えるのは、過去。

「誰もいないじゃない。」
少し鼻にかかった高い声が入ってきた。
慌てて私は立ち上がった。
「あら、誰もいなくてすみませんね。」
「先生、お久しぶりです。」
私は頭をぺこっとさげた。
定年が近そうな先生も、首をかしげるように、とりあえず会釈した。
「卒業生?」
「はい。」
「ごめんなさいね、全然記憶にないわ。」
「当然です。私が卒業したのは、8年前です。それも、1年生の時だけ、先生の英語の授業を受けました。あーっと、後は、3年生の時、テスト前に勉強を見ていただきました。」
「そう。」
先生はあごに手を当てるしぐさをした。
「それだけです。それでは、私は他の教室周ります。」
私は丁寧にと心がけて頭をさげた。
きっと、先生と会うのは最後だろう。
「そう、彼はお元気?」
頭をあげた私の視線と先生の視線とがぶつかる。
「わかりません。」
私は笑顔で答えた。
「そう。」
先生もにっこり笑った。
「失礼します。」
そう言って私は教室を後にした。