雨香麗が自分と戦い続けてどれくらい経っただろう……──。

 最初苦しそうにしていた雨香麗はしばらくすると動かなくなってしまった。そんな雨香麗を壁に横たえてからも死霊達は集まり続けている。

 電球は切れ、窓には亀裂が入り、部屋のドアの方から大きな音がしたかと思えば鍵穴が歪んでしまい、完全にこの部屋に閉じ込められてしまった。




「一体、何が起こって……!」




 霊が見えている徳兄と、見えなくてもその存在を知っている瑮花ともかく、麗司さんはこの状況にとても戸惑っていた。徳兄がなんとか落ち着かせているものの、そろそろ限界そうだ。

 その間にも地震かと思うほどに床が揺れ棚からいろんな物が落ちる。窓の亀裂が大きくなった時、大きな空洞音のような叫び声が部屋中に響き渡った。




「っく……そ」




 耳に悪い、死霊達の叫び声に徳兄は顔を歪める。俺も頭に響くその音を少しでも遮断しようと耳を塞ぐ。

 このままじゃ大量の死霊が部屋へなだれ込んで来るのも時間の問題だ。もしそうなればきっと、俺はどうにかなっても徳兄や瑮花、麗司さんは霊障に合ってしまう。

 そして今度こそ、雨香麗も喰われる。

 早く目を覚ましてくれ、雨香麗……!

 祈るように雨香麗の手を握るけど、思いとは裏腹に、亀裂の入る速度が早まる。




「あかん、もう無理や! 伏せろ!!」