振り返った由海の顔は、今まで見たことがないほどの憎悪を含んでいて、何も言えなくなった。
でもわたしが原因、という意味がわからない。
由海はそのまま走り去ってしまい、それっきり口をきいてくれなくなった。
いくらかの日々が流れ、だんだんと由海は笑顔を見せていくのと引き換えに、わたしからは感情がなくなっていく。
教室内での全無視、給食の異物混入、身に覚えのない噂。全てが表に出ないよう、巧妙に進んでいく。そしてわたしの精神も少しずつ、けれど確実に蝕まれていった。
陰湿ないじめが始まって1ヶ月ほど経ったある日の放課後。わたしの自殺を決定づける出来事が起こる。
体育が終わったあと、もう当たり前になったように、わたしは人目を気にして一番最後に更衣室へと入った。
その日は水泳。水着を脱いで軽く体を流すためシャワー室へ入る。けれど誰もいないはずの脱衣所から物音が聞こえ、不審に思ってタオルを身にまとい確認しに行った。
でもそこにはやっぱり誰もいない。
気のせいか、と着替えようとロッカーを開けたけど、入れておいたはずの水着や着替え、制服全てがなくなっていた。
手元にあるのは体を拭くために中へ持ち込んだバスタオルだけ。必死に脱衣所内を探す。
制服と下着は近くのゴミ箱に捨てられていたけど、下着はそれだけしかないのにも関わらず、ひどく汚れてつけられる状態じゃなかった。
それでもこれ以上ぐずぐずしてると授業に遅れてしまう。
仕方なく制服を来て、嫌に涼しい足元や、擦れる胸元を気にしながらその日をやり過ごした。
残りの着替えと水着は校舎裏に捨てられていると言われ、雨の中泥にまみれた着替えを持って帰った。
……とても、惨めな気持ちだった。
その翌日、トイレで信じられない話を耳にしてしまう。
「いやー、昨日のマジおもろかったね」
「あいつほんとに下着つけてなかったしさ」
「あれ、誰のアイディアだっけ」
「由海じゃなかった?」
「へぇー! 元親友なのに! やるねぇ。うちらよりひどいことすんじゃん」
嘘だ。由海が、そんな……。
個室の中で耳をそばだてる。この場に由海がいないんなら、それはこいつらの戯れ言にすぎない。
そう、思いたかったのに。