そんなことを悶々と考えていたある日の放課後。

 ゴミ捨ての当番だったわたしは袋を替えようとゴミ箱を覗いた。でもその中に本を見つけ、拾い上げる。薄汚れたそれは教科書で間違いない。

 さすがに学校で使う物を学校に捨てる人はいかがなものか、と名を確認して血の気が引いた。

幸川(さちがわ) 由海〟。




「……雨香麗?」

「ゆ……み」




 部活の合間にここへ来たのか、テニスのラケットを持った由海と鉢合わせてしまう。由海は大股でわたしのそばまで来たかと思えば教科書をひったくり、背を向けた。




「由海、いじめ……られてるの?」



 声が震える。

 もしそうなら、いやもうそうとしか捉えられないけど、どうしてわたしに相談してくれなかったのか疑問でならない。
 わたしなら、全力で由海を守る。全校生徒が敵になったとしても、由海の見方でい続けるのに。




「……だったら何。自分なら助けられるとでも?」



 背を向けながらも由海がすごく怒っているのが伝わる。

 そうだよ、わたしなら……──。

 〝助けられる〟。

 口を開きかけたわたしの言葉を由海の声が押し込めた。




「よくそんな能天気なことが言えるよね。全部あんたが原因だっていうのに!」