仲間外れ……みたいなのが嫌だったのかな。

 ぽかん、とひとり完全に置いていかれてる俺を気遣ってか、麗司さんはすぐに話題を変えた。




「まぁ、とにかく。あの子達は僕らで校内へ連れて行く。君達にはやることがあるんだろ?」






 なんという状況の呑み込みの早さ。
 逆にこっちが呆気に取られていると、少し目を鋭くした徳兄が麗司さんに言い放った。




「なんで……なんでそこまで、オレらのこと信用できるんです」




 その問いに麗司さんはさっきまでの雰囲気とは一変、冷ややかな笑みを貼りつけて即答した。




「妹を、雨香麗を助けるためなら、僕は手段を選ばない」




 その答えには一切の迷いがなかった。徳兄は「そうですか」と一言だけ残し、校内へと足を踏み入れる。俺も麗司さんへ会釈をして徳兄を追った。




「……よかったん?」

「何がや」

「ううん、なんもない」




 少し、徳兄の機嫌が悪い気がする。でも今はそんなの気にしてる暇ない。

 近づきつつある気配に鼓動が早まる。

 当たり前ではあるものの、広い校内には灯りなどついておらず、薄暗い中を進むことになった。いくつかの教室を超え、最上階である5階の一番奥の部屋。

 今まで見てきた扉とは一風変わり、少し豪勢な両開きの扉を前に、徳兄が小さな声で呟いた。




「ここは……」

「なに? 来たことあるん?」

「……理事長室や」




 電車の中で聞いた話を思い出す。徳兄と瑮花はここで雨香麗の父と話し、そして追い出されたと。

 扉の向こうにはさっき感じたあの嫌な雰囲気が溢れ出ていた。

────間違いない、ここだ。