そう思うのに体は金縛りにあったように言うことを聞いてくれない。

────やばい。

 そう思った時、聞き慣れた声が俺を引き戻してくれた。




「柴樹ー! 宗徳ー!!」




 ぎりぎりのところで声の主を振り返る。




「瑮花……!?」




 瑮花は「濡れてるじゃん!」と言いながら俺に傘を灯す。




「瑮花……なんでここに」

「嫌な感じがして。今までそんなの感じたことなかったんだけど……でもだからこそ、すぐここに来なくちゃって思ったんだ」




 霊感のない瑮花すらも突き動かす霊力……。

 それがどれほどのものか、想像するだけで恐ろしい。

 再び校庭へ視線を向けるとそこにはもうさっきの霊魂(れいこん)はおらず、禍々(まがまが)しい気配は遠ざかっているような気がした。




「なにこれ!? はっ、早く救急車呼ばなきゃ……!」




 瑮花は門の向こうに広がる光景を目の当たりにし、すぐ携帯で電話をかけ、少し俺達から距離を取った。




「なぁ、柴樹」

「なに?」

「感じるか、あの気配」

「……うん」