追いついた男も女がこれ以上濡れないよう傘を傾けながら、少女に困ったような笑みを返す。




「ごめんね、突然呼び止めちゃって。これ、落としてたから……大事なものだといけないでしょ」




 そう言って少女へ写真を差し出すとその顔色は次第に暗いものなっていく。




「まだ、残ってたんだ……」




 雨音に消されてしまいそうなほど小さなその呟きは、それでもしっかりと2人の耳に入っており、女は不思議そうに尋ねた。




「どうしたの?」

「あ、ううん。お姉さんわざわざありがとう」

「どういたしまして」




 少女は何かを隠しているように見え、それに勘付いていた女も笑みを浮かべながらしばらく少女から目を離そうとしなかった。

 会釈を返しながら去って行こうとする少女は、手にしていた写真を雑に鞄へと押し込んだ。それを見た女は思わず、と言った勢いで呟く。




「大事なもの、じゃないんだ……」




 その声は少女にも聞こえていたらしく、歩みを止めて罰の悪そうな顔をしながら振り向き、口を開いた。




「拾ってくれたのにごめんなさい。わたし、この子と喧嘩しちゃって。……もう、友達じゃないんです」




 もじもじと指を弄びながら「このプリクラも捨てるつもりで」と小さく呟く。

 どうやら少女の中ではこの行為が有難迷惑というものに変わってしまい、それをどう対処すればいいのかわからないようだった。
 しかし、女は心なしかこの状況をチャンスと見て、一歩少女に近づき笑顔で言う。