「おい瑮花!! こっち向け」




 それに驚いたしたらしいが、瑮花はゆっくりと頭を持ち上げ、涙でぐちゃぐちゃな顔を見せた。




「……なによ」

「なんで泣いてんねん。なんで待ち合わせ場所に来うへんかった。全部話せ」




 怒り半分でそう聞いたものの、瑮花は一度顔を逸らしてから口を開いた。それを合図にオレも肩から手を離す。




「あんた、さっきの聞いてなかったわけ? その場にいたくせに」

「は? さっきのって……」




 なんや、回りくどいこと言いよって。

 そう思いながらも記憶を遡っていくと神社で聞いた口喧嘩が蘇る。

 ……嘘やろ、まさか。




「あれ、お前やったんか……?」

「そうよ。だから今は家になんて帰りたくない」




 あんな「クソジジイ!!」なんて暴言を、コイツが……。ま、まぁ似合わへんわけちゃうけど、そこまで口悪いとは思わんかったわ……。




「お前なぁ、いくらなんでも客に聞こえるようなとこで喧嘩するんはどうかと思うで」

「いつもはしないわよ! ……今日は、ただ……堪忍袋の緒が切れた、というかなんというか」

「はぁ……何があったん」




 話を聞かへんと、先には進めなさそうやな……。

 そう思ったオレは話をしながら座れる場所を探して歩き出す。