すぐにあとを追う。けど、アイツはオレの言葉を無視し、傘もささずに大通りを抜け、近くの角を曲がり人の少ない場所へと駆けて行く。

 なんやねん、そこ待ち合わせ場所とちゃうやろ……!

 人の波をかき分けてやっと瑮花に追いつき、声を荒げた。




「おい!!」




 瑮花はそれに一度肩を震わせたが、すぐに立ち止まり、袖で顔を拭きながら無理に出したような声だけで答える。




「……っごめん」

「あーあ、ずぶ濡れや……ほら、これ」




 ひっくり返したバケツの水をかぶったように、全身ずぶ濡れの小娘に上着を投げかけ、傘の中に入れる。

 小娘はオレに気づかれんようにしたいんか、俯きながらしきりに顔を拭くも、鼻をすする音で全部伝わってまう。

 ……なんで泣いてんねん。

 この状況が理解できひんし、どんな言葉を投げかけたらええんかも知らん。それに今から聖皇峯(せいこうほう)行こ思てんのに、こんなんじゃあ、行かれへんやないか……。

 せや、いっかい家に帰したろ。そんで着替えさせて、コイツが大丈夫そうやったらまた向かえばええ。




「お前、一旦帰った方が……──」

「嫌!!」




 ……なんでや。

 コイツはせっかくのオレの提案を少しも聞き入れてくれへんかった。

 ああもう、オレにどうしろって言うん!?

 むしゃくしゃしていまだメソメソと俯く小娘の肩を掴んだ。