わっざわざこないなヤツと行かなあかんのか! 素っ気ないし、人に向かって舌出しよるし! オレなんかしたんか……!?

 そう思うほどに態度の悪いコイツは、オレの顔を酷く軽蔑するかのような眼差しで見ていた。

 これやから女は嫌いやねん……。




「ええっと……ごめん、でも頼めるの2人しかいなくて……」

「それやったらオレ1人で充分やろ。こないなヤツ、必要あらへん」

「そうよ。こいつに任せればいいじゃない」




 ……なんや、その言い方は。全部オレに押し付けようとしてはるみたいやわ。

 気に食わへん顔しながら2人で抗議すれば、柴樹は困った顔をしながら口を開いた。




「調査しに行ってほしい場所は〝女学園〟。たぶん、徳兄1人で行くと……」

「あぁ……不審者扱いね」




 ……せやった、行くんは女子しかおらへん学園。そこに紛れ込んだ自分が警察に突き出されるところまで想像して身震いする。

 この小娘なら大丈夫かもしれへん。けど、かと言って女1人を隣町まで送り出すんもなぁ……。




「そういうわけだから、ぜひ2人にと思って……ごめんね、本当なら俺が行けばいい話なんだけど」

「あかん」「だめ」




 申し訳なさそうに言う柴樹に小娘と同時にそう言えば、柴樹は頭を掻きながら「だよね」と弱々しく笑った。

 まだ離脱の疲労が完全に抜けたわけちゃうやんか。無理なんてさせられへん。




「しゃあなしに、今から向かうわ」

「えっ、今から?」




 驚く小娘の横で柴樹が「急がなくても」と立ち上がったオレを止めようとする。




「なんや、はよその子救う方法探し出さんと危ないんやろ。動ける時はすぐ動かな」




 目に涙を浮かべる柴樹の額を小突く。




「せやから、坊。ちゃんと体休めはってくださいよ」

「こいつと同じようなことは言いたくないけど、安静にしてて」

「2人とも……本当、ありがとう」




 そうして涙目な柴樹に送り出されたオレ達は、一度それぞれ身支度を整え、別の場所に待ち合わせてから、現地に向かうことにした。