もし、もしオレがこの立場なら……? 兄貴が死にかけの状態で彷徨っていたら、オレならどうする。助けたくてもその手段がわからへんかったら……。
途端に背筋に嫌な汗が流れ、思わず身震いした。
今、もう兄貴はこの世にいーひん。でももし生きているとなったら、その嬉しさは計り知れない。
柴樹の気持ちがオレの中に流れ込んでくるようで、それ以上責めることはできなかった。同時に柴樹がどれだけその子のことを想っているのか……愛しているのかが伝わり、胸に刺すような痛みを感じる。
────きっと、コイツは本気や。
せやからここまでできるし、その子のために泣ける。
「柴樹」
いまだ俯き涙する柴樹の名を呼べばゆっくりと顔を上げ、目元だけを髪の間から覗かせた。
「今回、なんでオレがここに来たかわかるか?」
「俺、が……離脱するからじゃ……」
「ちゃう」
────俺は決めた。
「兄貴に代わって坊。お前御付きの浄霊師になったからや」
「え……? 宗兄が、|浄霊師……?」
「なんやその顔は」
意外だとでも言いたそうな柴樹の額を小突く。
「だ、だって……宗兄、寺継ぐんは絶対嫌やって……」
確かに、昔はそうやった。あんな場所、あんなヤツらの相手しなけりゃならんような場所、すぐにでも逃げ出しとうてしゃあなかった。
けどな……──。
「兄貴が最後まで守ったもの、命を懸けたんがお前や」