そう怒鳴ると柴樹は少し怒りのこもった目でオレを見て、付け足すように言う。
「それに……あの子はまだ、生きてる」
「どういうことや」
生きてる? 意味わからへん。
「俺と同じ……離脱した状態で彷徨ってるんだ」
離脱、した状態……?
「最初見かけた時は絶望したよ。もうあの子は死んだんやって。でも瑮花が……幼馴染が、俺らは宗巫だから、まだ助けられるかもって、成仏に導くくらいならできるかもしれないって」
次第に柴樹の声は大きくなり、頭を抱えながら話し続ける。
「でも違った。次にあの子に会うた時、糸が見えた。糸があるってことはまだ体と繋がってるってことや。だから、生きてるってわかって嬉しかった。それやのに……」
ここまで話し、柴樹は黙ってまう。
────そうか。
わからなくなったんや。その子の救い方を。
死んでいたなら、成仏という選択を取ることでその子には生まれ変わる権利が与えられる。悪霊に堕とさずに済んだ。
でもその子がかろうじて生きていると知って、混乱したんや。
生きていても、その魂が体に戻れなければ時期に低級霊に喰われ、死が待ち受ける。
そっと柴樹の顔を盗み見れば、俯く頬から涙が流れていくのが見えた。
────コイツ、そこまで……。
ふと目の前で膝を丸くし、顔を隠しながら静かに泣く柴樹の姿が、2年前の自分と重なる。