俺まで目頭が熱くなって俯くと、徳兄が掠れた声で言った。
「おま……お前、オレらのこと知ってたんか……」
「隠してるつもりだろうけど、今の俺に隠し事はできないよ」
「お前ってほんまに……神様みたいなやっちゃな」
出てこようとする涙を押し込め、泣きながら笑う徳兄を見た。
「瑮花の花嫁姿、見たかったな……徳兄の花婿姿も……」
小さくそう呟けば黙ったままの瑮花に抱きすくめられる。その腕には痛いほどの力が加わっていた。
「紫樹……紫樹……! あんたはあたしの初恋だったんだから……!!」
「……うん。知ってた」
「知ってたのも知ってるわよ!」
「それも、知ってる」
そっと瑮花の背に手を回し、俺も強く抱き締めた。
ごめん。ごめん、瑮花。ずっとずっと、小さい頃からそばで支えてくれてたのに。瑮花の好意にも気づいてたのに、ごめん。
それを無下にするなんて、俺は本当に酷い奴だ。でもそんな俺を瑮花はずっと守ってくれてた。本当に……──。
「ありがとう」
嗚咽を繰り返す瑮花の背を撫でていると、涙を限界まで溜めて震える徳兄と目が合う。
「徳兄も、おいで」
右腕を広げて徳兄を呼べば、らしくもなくすぐ俺に飛びついた。
「……っバカ! 坊のバカ!! ほんっま自分だけいつも無理しはって……!」
「ごめんね、徳兄……せっかく、徳兄と家族になれたのに」