深呼吸して全てを話していく。唐突すぎて、徳兄も瑮花も開いた口が塞がらないと言った顔をしていた。

 朱紗との約束……──。

 それは、雨香麗の命を救う時に交わしたものだった。




『全て教えてやることは容易い。だが、それだけではつまらん』

『……俺はなんでもする。雨香麗が救えるなら、なんでも』

『ふふっ。そうか、やはりそう答えるか。よかろう』




 あの時、朱紗はひとつの条件を突きつけた。




『ならば、我がは主の魂が欲しい』

『……魂?』

『そうだ。その魂をくれれば、我がは存分に力を貸そう』

『でも……でも俺はまだ死ねない。やることが残ってる』

『なに、今すぐでなくとも良い。そうさな……(よわい)22の年祝いに、我がと来てもらおう』




 俺は明日、この世界から旅立つ……──。

 その日のために朱紗は全力で協力してくれた。不安定だった神憑も失敗することがなくなり、神社(うち)は今までになく栄えていると思う。でも、それも明日で終わりだ。




「俺が死ねば、朱紗も神社(うち)を去る。そうすればいずれ本家である日凪(ひなぎ)神社は廃れ、分家の与雅澄神社と日澄宗寺院が独立すると思う。そしてなにより……」




 淡々と話す俺とは対照的に、徳兄も瑮花も目に涙を浮かべていた。でも何も言葉が出ないのか、俺の話を聞き漏らさないようにしてくれているのか、強く唇を噛む。




「見合い制度がなくなって、恋愛が自由になる。……2人が結ばれてもいい時代になるんだ」