「やっ……たんか」




 無数に集まった死霊も全て光の粉になり、宙に溶けて消える。だんだんと光も弱まって横たわっている雨香麗の元へ、瑮花と柴樹が駆け寄った。

 それをオレはぼんやりと見つめながら左手にぶら下がる数珠に触れる。

 ……これか。兄貴を感じたんは、きっとこれからや。

 まだ熱を持ったように温かいそれを撫で、自分が本当に徐浄霊(じょじょうれい)を成功させてしまったことにいまだ現実味を感じられないまま、柴樹達のそばに歩み寄る。




「……雨香麗、戻って行ったよ」

「そうか」

「徳兄もお疲れ。……秀兄、超えたね」




 柴樹はそう言って満面の笑みを見せる。1人状況を理解できていない瑮花に柴樹が説明し始めた。




「お兄さん超えたって……どういうこと? 宗徳が一番下の階級で、お兄さんがその上なのは知ってるけど……」

「そのさらに上、一番難関なのが、霊を祓う除霊(じょれい)と成仏に導く浄霊の両方を行える職種────」

「……徐浄霊(じょじょうれい)や」

「え!? ほんと!? あたしてっきり宗徳の浄霊の力のおかげだと……」




 瑮花はオレに力があるのに、と怒鳴った時、それを思っていたらしい。オレの浄霊の力があれば霊魂を鎮められると。

 とんだ勘違いやけど……ま、結果オーライ、やな。オレが自分信じられたんもコイツのおかげや。……んなこと、口が裂けても言われへんけど。

 でもオレが徐浄霊で雨香麗を鎮めてしまったことに、ひとつだけ欠点がある。まだ不完全な術式を使ったせいで、きっとアイツは────。