夜が明けていく。

今のこの気持ちを、どんな言葉で表現できるだろう。

何千、何万とある言葉の中から探したとしても、きっとこの気持ちを表現することは難しい。

私の語彙力はどこにいってしまったのか・・・・・・。

言葉を表現してきた元小説家としては、とても悔しい気持ちだった。

そして、それとは同時に表現できない程の興奮に感動すら覚えた。

ボーカル、ギター、ベース、ドラム、その全てのサウンドがパズルのピースのようにハマっていく。

どれが欠けても完成しない完璧なバランスのバンド。

そして、そのバンドを更に魅力的にしているのは、カリスマ性を感じる程の力強いボーカルの歌声だろう。

ただ歌が上手いだけでなく、彼の歌声には“生”が感じられた。

心の奥底から湧き上がるような感情に、気付いた時には私の目からは涙が溢れていた。

“あの時”も涙すら出なくて、私の心は完全に枯れてしまったのだと思っていた。

「私、ちゃんと生きてるんだ・・・・・・」

抜け殻の様に毎日を過ごしていた私にとって、彼らとの出会いは再び“生”を実感できる奇跡のようだった。

彼らの歌に誘われ、道行く人の多くが立ち止まって聴いている。

私はその人垣から少し離れた所で彼らの歌を聴いていると、ボーカルの人と目が合い彼は優しく微笑んだようだった。

バラードでもないのに泣いているなんて、きっと変に思っただろう。

それでも私の目からは次々と涙が溢れ、すぐには止めることができなかった。

その日を境に、今まで目的もなく歩いていた夜の散歩が、目的のある散歩に変わった。