俺がお前のこと可愛がってやるから

瑠々side

瑠衣くんと話しながら映画館に向かう間にも、たくさんの人が瑠衣くんのことを見ていた。やっぱり学校以外でも王子様なんだなぁと思った。今までは瑠衣くんの事なんか気にしたこともなかったから、なぜか新鮮に思えた。瑠衣くんと友達ぐらいにならなれるかもと思った。

「瑠々」

「瑠衣くん何?」

「俺、瑠々と手繋ぎたい」

「ん?」

「デートだからデートっぽいことしたい」

やっぱり瑠衣くんと友達になるのは無理みたいだ。かといって、恋人になるのも考えられない。しかも、まだ本当に瑠衣くんが私の事を好きとも限らないし、私自体まだ瑠衣くんのことをよく知らないし、好きじゃない。

「手を繋ぐのは恋人とするんじゃないの?」

「瑠々は俺の彼女候補だから」

「私は立候補した覚えないけどなぁ」

「俺瑠々しか考えられないし」

こうやって、甘い言葉で私の事を惑わしてくる。やっぱり瑠衣くんずるいよ…

まだ了承してないのに、瑠衣くんが私の手を握ってきた。突然の出来事に私は赤面した。

「瑠々、照れてる?」

「だって手繋ぐの初めてなんだもん!」

「俺も初めて」

「嘘だよ…」

「嘘じゃないっていったら?」

「信じられない」

「この前から俺は一途って言ってんじゃん」

「それでも信じられないんだよぉ」

「好きじゃない子の手とか握らないから」

「そっか…でもありがとう」

こんな私が瑠衣くんなんか独り占めしちゃっていいのだろうか。私よりも瑠衣くんの事大切にできる人がたくさんいるだろうに。

手を繋いだまま映画館に着いた。

「俺、チケット買ってくるから瑠々はここで
待ってて」

「私も行くよ。チケット代払わなきゃ」

「俺が誘ったんだから俺が払うのは当たり
前。だから瑠々はここで待ってて?」

「分かった」

私は瑠衣くんの優しさに甘えてここで待つことにした。

私が瑠衣くんを待っていると、20歳ぐらいの男の人2人が私の元にやってきた。

「そこの可愛い子1人?」

私は気付かないふりをした。

「気付かないふりするとかいい度胸じゃん」

「俺たち、今からホテル街行くけど一緒に行
かない?」

私は無視をし続ける。

「お前が何も言わないならこっちも力づくで
いくけど?」

1人の男がそういうと、私の両腕を強く握ってきた。

「やめてください」

「やっと喋った」

「想像以上に声かわいい」

「俺持ち帰ろうかな」

「今日はお前に譲るよ」

「サンキュー」

私が抵抗しても男の人に敵うはずもなく、男の顔がどんどん私に近づいてくる。恋愛未経験の私でもこれが危ない状況だということぐらいは分かる。

「そこの男達、俺の瑠々に手出しするとか正
気か?」

この声は瑠衣くんだ。

「お前、彼氏いるなら言えよ」

「そうだよ!俺たちと遊びたかったとか?」

「そんな訳ないじゃないですか」

「今日のところは帰るぞ」

そういうと、2人の男は帰っていった。

「瑠々ごめん…」

瑠衣くんに謝られた。

「瑠衣くんは謝らないで…」

私はそう言いながらも全身が震えている。もし、瑠衣くんが来てくれなかったらと考えると私は怖くなった。

「瑠々、俺には甘えてろよ」

「私は大丈夫。でも助けてくれてありがと
 う」

「大丈夫じゃないだろ。体震えてるの分かる
 から」

「迷惑かけてごめんね」

「これで迷惑ならもっと頼って欲しい」

「瑠衣くんには頼ってられないよ」

「そんなに俺って頼りない?」

「そんな事ないよ!けど、瑠衣くんに迷惑は
 かけられないし…」

「さっきも言ったけど俺には頼ってくれてい
 いから」

「ありがとう」

『瑠々は俺が守るから』

瑠衣くんがこの言葉をかけてくれた時には、自然と涙が溢れていた。さっきの出来事は本当に怖かった。瑠衣くんの前でも我慢できないなんて情けないなぁと思いながらも、優しくしてくれる瑠衣くんに甘えてしまう。

「映画はもういいから、人気がないところに
 移動しよっか」

瑠衣くんは恐らく私が泣いているから、人気がないところに移動してくれるのだろう。映画のお金も払ってもらったのに、一緒に見れなかったなんて…でも、私はそんな事を考えられなくなるぐらい恐怖に駆られた。

「瑠々ここなら泣いても大丈夫」

「グスッ瑠衣くんありがとう」

「ほんとに守れなくてごめん」

瑠衣くんは私を抱きしめた。

「瑠衣くん…?」

「体の震え止まってないから」

「ありがとう」

私は一言だけそう言った。瑠衣くんの事は今日でガラリとイメージが変わった。学校で王子様って騒がれている理由も分かる。あんなに苦手意識を持っていたのに、抱きしめられた時に嫌悪感は感じなかった。むしろ、この温もりに包まれていたいって思った。初めて、瑠衣くんのことをかっこいいって思った日だった。