6限目の授業を終え、帰宅する時間。

「日和!」

この低い声は大和だ。

「大和、どうしたの?」

「俺、今日部活ないから一緒に帰ろ」

「別にいいけど」

大和はバスケ部として1年生ながらレギュラーとして活躍しているらしい。私は、家にいる方が楽なので、部活には所属していない。だから、いつもは1人で帰るのだが、こうやって大和に誘われて一緒に帰ることがたまにある。

「よっしゃ。日和と帰れるとか幸せ」

私は不覚にもドキッとしてしまう。大和は私が恥ずかしがるようなことをわざという。最近では、思わせぶりって言うのかな。

「大和にはたくさんのファンがいるんだから
その子達と帰ればいいのに」

大和にはいつもこう思う。私とわざわざ一緒に帰らなくても、大和の周りには男女問わずたくさんの人が集まっている。だから、その人達と一緒に帰ればいいんじゃないの?って思う。それに、大和とは幼なじみなだけあって家も隣だから、いつでも会える。だから、私に執着する必要なんてない。私たちは“ただの”幼なじみなんだから。

「日和からそんな事言われたら悲しくなる」

「悲しくならない。今日は私がおれてあげ
る」

「日和ならそう言ってくれると思った」

そして、私たちの家の前まで着いた。

「大和、また明日ね!」

「おう」


家に帰るとすぐにお母さんが出迎えてくれた。

「日和、おかえり」

「お母さん、ただいま」

「今日は日和に大事な話があるの」

「何?」

「今から話すからそこに座ってくれる?」

お母さんに言われるがまま、リビングのソファに座る。

「日和に大事な話があるの」

「うん。何?」

「お父さんの出張が決まったの」

「どこに出張行くの?」

「ヨーロッパの方らしいのよね」

「え?」

「突然でごめんね…」

「私、転校しなきゃならないの?」

「日和がそういうと思って、泉の家で預かっ
てもらう事になったわ」

泉というのは、大和のお母さん。つまり、大和の家で過ごすってこと?!

「私、大和の家で過ごすの?!」

「そうよ。大和君と仲良いからいいじゃな
い」

「そうだけど…」

「泉も快く引き受けてくれたのよ」

それはありがたいけど、大和がいるのかぁ。嫌ではないんだけど、いつもお母さんとお父さんが仕事から帰ってくるまでは1人でいたから慣れないなぁと思う。

「私、1人でも大丈夫だよ?」

「高校生の娘を1人で置いていけるわけない
でしょ」

「そう言われると何も言えないよぉ」

「そういうことで、お母さんは今からヨーロ
ッパへ向かうから泉の家で過ごすこと」

「今日からなの?!」

「もうお父さんはヨーロッパむかってるし、
私も追いかけなきゃいけないの」

「そっか…お父さんに頑張ってって伝えとい
て!お母さんもお父さんと頑張って!」

「お父さん喜ぶわ。じゃあ行ってきます。」

「いってらっしゃい」

ガチャン