「おうい、レイン」

俺が牛たちに水を飲ませていると、後ろから男の声がした。

初めて会ったとき、行列の2番目にいた男だ。

「ゴート」

俺は彼の名を呼んで応えた。

ゴートはとても背が高い。体つきも立派だ。まだ若いので、短く髭を伸ばしていた。

俺たち兄妹の面倒をよく見てくれた良い男だ。

「ごくろうさん。今日はもう牛の世話はいい。代わりに市場まで行ってきてくれないか。穀類が少し足りないのだ」

「分かりました」

俺は答えた。

ゴートは腰に手をあてて、ため息をついた。

「お前なあ、もう少し、愛想ってもんを身につけろよ。そんなんじゃ、メルちゃんが怖がるぞ」

そう言って彼は豪快に笑った。

俺もつられて、弱々しく笑った。

ゴートは俺の頭を軽くこづくと、背中をぽん、と叩いて「早く戻れよ」と言った。