たしかに、デートって感じがする。普段の週末、友だちと遊ぶことも少ないわたしには、あまりにも楽しすぎて、かなりハイになっていた。
「これ食べたら、帰ろっか」
軟弱なわたしを気遣って、一条くんが提案する。もうそろそろ、楽しい時間は終わり。それが、さみしくて。また、いつものクラスメイトに戻らなきゃいけないのがさみしくて。
「まだ、帰りたくない」
体力のないわたしはちょっと疲れていたくせに、それを見ないふりして首を振った。じぶんの限界を分かっているくせに、まだ大丈夫だと過信して。
しってる。一条くんは、わたしの我儘に弱い。
「でも、宇田さん疲れてない?」
「へいき、もっと一条くんとおしゃべりしたい」
「そんなの、俺、断れないよ」
だいぶ心配そうにこちらを覗き込みながら、一条くんは困ったように笑う。それが少しだけ大人びて見えて。
制服を着ていない彼は、透けるように儚い美少年というよりも、花のように麗しい男の人だ、なんて。隣の席の男の子のこれまで知らなかった一面を見た。休日に約束して遊ぶ、というのは、とってもとくべつなことだと知った。
「きょう、わたし、すっごく楽しい」
「ほんとう?それはよかった」
「一条くんも楽しんでる?」
気になって訊ねると、彼は瞬きをふたつして、くすっと笑ってから答えをくれた。
「ん、ちょーたのしい」
「じゃあ、同じだね」
わたしが頷くと、「そ、おんなじ」と噛み締めるように言葉を繰り返す。
———あえて言うなら、シンプルな褒め言葉より、おなじだね、みたいな共感のほうが心に残るかもしれません。
冷たそうに整った顔立ちや落ち着いた物腰と理屈っぽい話し方、それらの仮面で掴みにくいけど、一条くんはふつうの男子高校生だ。



