それを合図にして、わたしたちは座り心地満点のシートから立ち上がる。人気のなくなった薄暗い通路を、足元に注意しながら歩く。わたしが前、一条くんが後ろ。
「一条くんって、映画すきなの?」
「そうでもないと思う、通好みの映画?みたいな?あるじゃん?」
「ある、国際映画祭で賞とるタイプのやつね」
「そうそう、そういうのは得意じゃないから、たぶん俺はニワカだね」
一条くんは、映画マニアではないらしい。わたしといっしょに楽しめる娯楽って多くないから、彼は映画館を選んでくれたんだろうな。
そうやって、さりげない優しさで包んでくれるから、あなたはやっぱりずるいひとだ。
はじめてのデートは、とてもいいかんじに進んでいる。期待以上だ。
映画の内容も百点満点。セクシーすぎたり、退屈だったり、オチが最悪だったりしなくて。おかげで、気まずくなることもなくて。
ほら、映画を選ぶのって、めちゃくちゃセンス問われるでしょ。一条くんは基本的に何にでもセンスがいいので、こちらは安心できる。



