それでも、恋


それから、ふたりでドーナツを食べて、いつも通りのお喋りをして、時間になったので、映画館に移動した。

上の階にある映画館は照明が薄暗くて、大きい音が鳴っていて。なんだか、ちょっと大人の世界に感じる。あいかわらずローテンションの一条くんは、なんだか映画館が似合うと知った。それを知っただけで、わたしはとても嬉しくなった。

ここはわたしが、コーラをご馳走してあげた。ドーナツのおかげでお腹がすいてなかったから、ポップコーンは買わなかった。

映画のお供に炭酸飲料はナンセンス。だって、2時間もあったら気が抜けちゃうから。

わたしがそう告げると、彼は動きを止めて、「先に言ってよ」とわたしをふざけて睨んだ。こういうときに、屁理屈で反論しないのはめずらしい。


映画館で流れる映画の予告を観るのがすきだ。先に着いたわたしがそう言うと、「わかる」と隣に座る一条くんも頷いた。

きょうの彼は、いつもより素直。

そんな一条くんが選んでくれたのは、キュートな女の子3人組が、地球を救うために夜な夜な悪い敵を倒す!というアクション映画。昼間はふつうの女子高生なのに、じつはすごい怪力だったりバズーカをぶっ放したりする、たのしい洋画だ。