品の良い服装は期待通りで、きらめく美少年っぷりにはため息が漏れる。トングとトレイは、一条くんが持ってくれた。それがあまりにも自然だったから、美味しそうな輪っかに目移りしながら、思わずたずねてしまう。
「一条くんって、デートに慣れてるの」
「ん?慣れてないよ?」
「じゃあ、なんでこんな上手なの」
お気に入りの、シュガードーナツ。このお店の人気商品であるそれを指さすと、当たり前みたいに彼が取ってくれた。そして、続けてもうひとつ同じものをトングで掴みながら、一条くんは笑ってわたしのことばを繰り返す。
「えええ、上手?」
「うん、上手だよ」
「まあ、ドーナツは慣れてるからね」
ドーナツを取るのが、上手ってわけじゃない。デートという、この、女の子と遊ぶシチュエーションそのものが、とっても上手だ。そんなのお互いに分かっているし、分かっているのを分かっていたけど、「ふうん」とだけ返した。