デートをする、とお姉ちゃんに教えたら、ワンピースを買ってくれた。
白い襟がついている、黒いワンピース。いかにも、お姉ちゃんが好きそうなそれに、ブーツと鞄も合わせてプレゼントしてくれた。気合が入りまくりのお姉ちゃんは、きっと、わたしにちょっとだけ同情している。
ぜんぜん、かわいそうなんかじゃないよ。だいじょうぶ。
一条くんと制服を着ないであそぶのは、はじめてのことだ。どきどきが、またひとつ増えた。
そして、デートの当日。日曜日。
おしゃれをして向かった待ち合わせ場所は、映画館の下の階にあるかわいいドーナツ屋さん。ここで軽くお茶をしてから、映画鑑賞に進む予定だ。
そんな、やくそくの13時。
予定を立ててくれた一条くんは、ドーナツ屋さんの席に座って待っていてくれた。シンプルだけどおしゃれな店内が、なんとも似合いすぎる。
「おまたせ、しました?」
なんだかデートみたいなせりふになってしまって、わたしは恥ずかしくなった。だけど、意識しすぎているのはわたしだけみたいだ。
彼は触れていたスマホを置いて、いつもの登校してきたときと変わらない挨拶をしてくれた。
「ううん、おはよ」
「おはよう、あ、わたし、ドーナツ買ってくる」
「俺もいま来たところだから、いっしょにいく」
座らずに、脱いだコートを席に置いただけのわたしを見て、一条くんも静かに席を立った。