それでも、恋


デート?デートって、ほら、あの、デート?え、あ、まって、いまふたりで帰ってるのはデートじゃないよね?デートって、なに?手とか、繋ぐの?一条くんって、綺麗好きだけど、手繋いだりできるの?

ていうか、なんなのこれ!あたまのなかに、文字が浮かばないんだけど!

 
いや、うそ、かも。
で、え、と、の3文字だけがちかちか点滅してる。


だめだ、追いつかない。数学をがんばりすぎた脳みそでは、ちょっと回転が悪すぎる。


「敵と戦うやつがいいなあ、感動ものはぜったい飽きちゃうから嫌いだなあ」

「え、あの、」

「恋愛も醒めちゃうからやだな、他人のキスシーンとかちょっと気色わるいしね」

「そ、そうですか、」

「あと、歌ったり踊ったりするやつも嫌、これは共感性羞恥心だろうね」


そんなわたしをスローモーションの世界へと置き去りにして、一条くんは話している。

え、このひと、もしかして映画の話してる?!デートのほうは?!デートのほうが気になるんですけど?!正直にいうと、映画のタイトルとか、どうでもいいんですけど?!

ていうか、ラブストーリーは嫌なのかよ!デートなのに!


「でも、宇田さんとデートなら何でもいいや」


いや、だから、デートってなに!!!!!!!