そわそわして聞いてるだけの俺を置き去りに、こっちゃんが話に加わった。


「真菜子はどちらかといえば猫ってかんじ」

「ねこ?飼ってないけどね」

「お姫様とかが飼ってる高級な白猫みたい」


わかる、と頷いてしまう。宇田さんは、溢れ出る育ちの良さを隠せていない。

ふうん、と返事した宇田さんは、手を丸めて顔の近くにもってきて。その手を揺らすと同時に、平坦な声で鳴いた。


「にゃあ」


ええええ!か!わ!い!い!!!!動画に撮っておけばよかった。え、かわいい。もう一回やってくれないかな。何その不意打ち。

頭のなかがパニックになる程の可愛さだ。ああああ、かわいすぎた。もう、飼いたい。飼って愛でたい。

無表情のまま、心臓を押さえて悶えている俺とは裏腹に、折口くんは「宇田さんかわいい!」とあっさり言葉にする。

うん。折口くんは悪くないけど、すっごく腹立つ。そして、満更でもないかんじでへらへらしている宇田さんにも腹が立つ。


俺が、宇田さんを捕まえるまでの道のりは、もうちょっと長そうだ。