一条くんは、いつもそうだ。誰にでも同じような態度を取るくせに、いつも決定打は〝好きな相手かどうか〟だけ。好きな子だったら答えが変わるし、好きな子だったら許せてしまう。
それは、みんなが持ってるのと同じようなありきたりな考え方なのに、彼が言葉にするとなんだかすごくきらきらした色に感じるから不思議だ。
一条くんが本気を出したら、落ちてこない女の子なんているはずがない。それなのに、彼はいつでもまっすぐに、ぜんぶを許せちゃうくらい、とびきり好きな子だけを求めている。
無欲なくせに貪欲なその誠実さが、ずるい。
「そんなに好きな相手でも菌はいるんだ」
「俺、自分以外はみんな汚いと思ってるから」
「さいていだね、しかも自分は汚くないのね」
「うん、俺は綺麗だよ」
こっちゃんと一条くんのゆるやかな会話をBGMに、わたしは一条くんとのファーストコンタクトを思い出していた。