いつも、わたしが負けている。くやしい。
ていうか、けっきょく借りを返せないなら、わたしは家でゲームしていたかった。スバルくんとのラブストーリーは、キュンキュンするけど苦しくない。もし、失敗しちゃって振られちゃっても、こっちは余裕でゼロからリトライできる。
乙女ゲームは、絶対的な勝ち戦だ。
「たまにはこうやって、4人で放課後遊ぶのも楽しいなあ!」
「うん、勉強しに来たんだけどね」
「遊ぶのも勉強って言うしね!」
折口くんと会話する、いつも通りの一条くん。学校の外で見る、とくべつな一条くん。
「たのしいね」と折口くんに向かって頷いた後、わたしと目を合わせていかにも勝者らしく微笑んだ。
「宇田さんに貸しを作るの、ほんと楽しい」
やれやれ。もう、なんていうか、やれやれだ。やれやれな気持ちをホワイトモカで流し込む。あまくて、あったかい。冬の味がする。
これから、もっと寒くなるんだろうな。冬は、好きだ。一年中、ずっと冬でもいいくらい。
「真菜子、その席寒くない?体冷やさないでね」
「大丈夫だよ、ありがとう」
心配症のこっちゃんが声をかけてくれたのに言葉を返して、すこし冷えた指先を熱いカップに触れて、温めた。
それから、またホワイトモカを飲む。熱が、喉から気管をまっすぐに流れていくのがわかる。



