それで、相変わらず綺麗な声で注文して、女子大生らしき店員さんをうっとりさせている。一条くんほどの美少年にもなると、五感で魅了させちゃうらしい。
「宇田さんも来なよ、なに飲むの」
ぼんやりと後ろに並んでいたわたしを振り返って、質問を飛ばす。わたしはとっさにいつも飲むやつを答えた。
「あ、え、ホワイトモカ」
「冷たい?熱い?」
「あ、あついのがいい」
わたしは頭の回転が速くないので、慌てて返すのが精一杯だ。そんなわたしを置いてけぼりにして、一条くんが流れるようにわたしの分まで注文していく。
「ホットのホワイトモカもそのサイズでください」
さらに、なんと、自然なかんじでわたしのぶんまでお会計をしてくれた。わざとらしくもなくこそこそしたかんじでもなく、まるでよくあること、当然なことみたいに。
スマートすぎて、いつもの拗ねてるかわいい一条くんじゃない。なんだかデートに慣れてる経験豊富な男の子みたいに見えて、くやしい。



