翌日の放課後。下校の支度を終えた一条くんが、透明な声で誘ってくれた。


「宇田さん、いっしょに帰ろう」


まわりの席から、ひゅーだのしゅーだのと冷やかされたけど、美少年が男らしく「わるいね男子諸君、宇田さんは俺のものになりましたので」などと交わしてくれる。

いや、むしろ火種を注いでいた。まてよ、俺のものってなに?えええ?!ふたりってどこまですすんでるの?!っや、やめろよ、ばか!宇田さんを穢すな!

丸聞こえの会話に白けた目を向けると、「おおおお」と謎の歓声を受けた。なんなの、もう。


そして次の関門。


「え、まって?もしかして、真菜子と一条くんふたりで帰るつもり?」

「うわあー!それはない!ひどい!鬼!魔物!モンスターに遭遇した!たたかう!」


こっちゃんと折口くんだ。こちらはしつこいので、なかなか大変。わたしも一条くんも、それをよく知っている。いつもならルービックキューブをかちゃかちゃ回して退屈そうに無視を決め込む彼だけど、今日はしっかり応戦体制だ。