その時だった。


「涼っ!!大丈夫かっ!!お前こんなところで何をやってんだよっ!!」


川の中央辺りで、立ち止まっている涼を発見したのは紫音だった。

明るくなってきたので、紫音も渚の靴を探しに来たのである。

紫音がふと足元を見ると、渚の片方の靴が置いてあった。


「夜中から探してたのか?靴を探すなら、明るくなってから探せばいいだろっ!!たかが靴くらいで、お前はバカかっ!!」


そんな紫音を見て、涼は怒声を上げる。


「どうせ俺はバカだよっ!!こうでもしないと紫音に勝てないからさっ!!
これは渚が珍しく俺に自慢してきた、大切な靴なんだよっ!!!!」


「勝ち負けの話じゃねぇだろっ!!靴なんてまた買えばいいだろうがっ!!」


紫音の言葉に、涼は苛立って反論した。

ただ靴が無くなった。なんて簡単な話ではないのだから。


「何もなかったように下駄箱に返してやりたいんだよっ!!
だから夜中から探してたんだっ!!
可哀想だろ?靴が川に捨てられたなんて、自分がいじめられてるって思い知らされたみたいでっ!!」


涼の気持ちがわかると、言葉に詰まる紫音。

紫音だって涼と同じ気持ちで早朝から探しに来たが、この川に飛び込めるか?と考えると、同じ事はできないと思った。