涼は紫音が渚を振り払った事、あれから渚を遠ざけている事を思い出しながら、大雨の中をずぶ濡れになって走っていた。


渚は紫音が好きなんだ……


もう俺に出番がないなんてわかってるよ……


それなのに紫音があんな様子なら……


もう俺しか渚を笑顔にできる奴がいないじゃないか……


あんなに渚が嬉しそうに俺に見せていた靴……


見つかるといいな……


涼が川に到着すると、いつもは3メートル程の幅に、少ししか水が流れていない川が、台風による増水で、激流になっていた。


ゴーッという激しい水の音に加えて、土砂や木が流れて来る川を見て、絶句する涼は、その場で立ちすくんでしまう。


「こんなの見つかるかよ……明日の朝までに見つけないと、靴がなかったら、渚は困るよなぁ……」


とりあえず、川沿いを歩きながら、スマホのライトを照らして歩いてみる。


「流れ着いてたら楽なんだけど、川底なら見つからないよなぁ……」


しばらく探していると、1つは流れていた大木が川を塞いでいて、靴が大木に引っ掛かっていた。


「ラッキーっ!!この程度でもう1つ見つかれば、渚は少しくらい俺の事を見直してくれるかな?」