「ダっ……ダメですっ!!」


顔を背けた渚は、両手で紫音の胸を思いっきり押して、その場から逃れた。


紫音のキスと傷付けた涼への思いを、天秤にかけた結果、涼に軍配が上がったのだ。



「カットーーーッ!!何をやってるんだっ!!


監督の怒声が響く中、渚はすぐに頭を下げた。


「すいませんっ!!もう一回お願いしますっ!!」


監督が怒った相手は、渚ではなく紫音だった。


「紫音っ!!何を勝手な事をやってるんだっ!!」


落ち込んだ様子の紫音は、渚に小さな声で謝った。


「ごめん……」


「いえ……大丈夫です」


紫音が監督に説教されている間、渚は、涼を傷付けずに済んだ。と思って、涼の方を見てみる。



しかし涼は渚達に背を向けて、台本を読んでいた。


それを見た渚は複雑な気持ち。


見てなかったんだ……


そりゃそうだよね……


振った上に、舞さんに盛られた話を聞かされて……


そこまでされて、私に興味ある方がおかしいもん……


本当にごめんね。


涼……