撮影シーンは、昼休みの屋上で、紫音がライブを見に来て欲しい。と渚に伝えるシーン。
監督やカメラや音声のスタッフ達、その他にも、涼や舞達のクラスメイトも見守る中で、撮影が始まった。
「渚って俺のライブを見たことあったっけ?」
「ないですよ~。ファンクラブに入ってますけど、全然チケット取れなくて」
CYBER KINGSのライブのチケットは、抽選倍率が高く、なかなか当たらないプレミアムチケットであり、生で歌っている紫音を見たことがない。
「今度の日曜日、ライブやるから、良かったら特等席から見てみる?」
「特等席……?」
「そうだよ。一般席じゃなくて、ステージの袖に招待するよ」
ステージの袖とは、ステージの横のスタッフがいたり、衣装が用意されているステージの裏側。
そこから見ると、横から見ることになるが、一般席の1番前より、距離は近くで見れる。
「えーっ!!本当にいいんですか?」
ここまで台本通りだった。
ガシャッ
「きゃっ!!」
紫音が突然、少し乱暴に渚の両肩を掴むと、屋上の柵に向かって押し込んだ。
柵で背中を打ち付けた渚は、何が起こったか全くわからない。
紫音が両手で柵を掴んで渚を挟むと、逃げ場はなくなった。
「えっ……?」
また紫音のアドリブだ。
そこに紫音の怒り気味の顔が、渚に近付いてくる。


