My dear prince~初恋の幼馴染or憧れのアイドル~

呆然としている渚を横目に、舞は涼の元へと小走りで走っていく。


「涼くん。一緒に行こっ」


「あぁ……いいよ」


舞が涼の背中に手を回すと、渚に背を向けて4人は歩いて行った。



そんな後ろ姿を見ている渚に、舞の声が聞こえてくる。


「もし私が渚ちゃんの立場だったら、涼くんの気持ちも考えて、キスなんて絶対に抵抗するけどね?
台本にないから無理ですってね?」


そんな話に取り巻きの女子達が言う。


「ほんとそれなーっ」


「見た目の清純な雰囲気と違って、意外と遊んでるんだね~。あの子って」


酷い言われようだが、今の渚に抵抗できる言葉はない。

ただ黙って涼の背中を眺める事しか出来ない渚。

知られたくなかった。

いや、知られなかったら大丈夫なんて話でもない。

あれは演技で止められなかった。なんて言い訳もできない。

渚の心は紫音に向いていたのだから。

4人の後ろ姿を眺めていた渚は、窓の外を見て涙を浮かべた。


私……涼を傷付けてばかりだね……


紫音は演技だったかも知れない……


でも私はキスしてもいいって思ってた……


涼の気持ちを考えたら、断るべきだったよね……?


私って……最低だ……