そんな事を言いたくない。

渚は歯を食い縛って黙ったまま俯いて
、時間が過ぎるのを待っていた。

しかし黙っていても、この場が収まるはずもなく、舞が詰めてくる。


「早く謝りなよ?
紫音を独り占めしようと思って、すいませんでした。ってさぁ?」

周りの女子達の空気も謝る方向になっているのが、ヒシヒシと伝わってくる。

そして涙を浮かべた渚は、とうとう謝罪の言葉を口にした。

「紫音を独り占めしようと思って、すいませんでした」


それでも舞は許してくれようとしない。


「みんな~?謝るのは土下座だよね~?」


オーディションに合格してから、紫音をひと目だけでも見たかった者。

紫音と一緒に写真を撮りたかった者。

そんな素人に毛の生えた程度の、女優の卵達も中にはいた。

強い者に巻かれる、一部の女子達から巻き起こった土下座コール。


「土下座っ!!土下座っ!!」


「土下座っ!!土下座っ!!」


辛くて、悔しくて、悲しくて、涙が溢れてくる渚は、追い詰められて教室の床に座った。