少し静かな空気が流れた後、涼がいつになく真剣な眼差しで、渚を見つめて言った。


「俺は小さい頃から、渚の事がずっと好きだったんだ……」


「えっ……」


渚は言われなくても、ずっとそうだと思っていたし、いつか涼と付き合うものだと、勝手に思っていた。

楽しかった思い出ばかりが頭を過ると、黙ったまま涙が滴り落ちる。


「もう遅いよ……
私……紫音と一緒にいたい……」


渚が今の気持ちを伝えると、涼は無理に笑顔を作った。


「泣くなよ~。泣きたいのは俺の方なんだからさ?」


10年も一緒にいれば、涼が笑っていないのなんて、全部お見通し。


「本当にごめんね……涼……」


「別に付き合ってほしい。って言いに来た訳じゃないから。
紫音に負けないように、俺も渚に好きになってもらえるように頑張る。
って言いに来たんだ」


「涼……そんなのダメだよ……?」


紫音と付き合えなかったら、涼でいい。

そんな失礼な事はできないと感じた渚は、涼にダメだと伝えた。


それは事実上のお別れを意味しているのに。