My dear prince~初恋の幼馴染or憧れのアイドル~

その日の夜。

ホテルの中庭に、先に到着したのは渚だった。

涼の話したいことは、だいたい想像がつく。

紫音のことだろう。


キスシーンの事か?


それとも紫音と付き合ってるのか?


そのどちらかだろう。


渚は頭の中で、ずっと涼の話の答えを探していた。


なんて言えばいいんだろう……?


付き合ってはいないけど……


付き合えるはずもないし……


涼と舞さんはどういう関係?


涼が舞さんと幸せそうに話してたから……


私は紫音の事を好きになってもいいんだよね……?


何度考えても、この言い分しかないと思って、言葉を用意していた。


そこへ涼がやって来る。


渚が想像していたのとは全く違い、涼は笑顔で軽く右手を上げる。


「よっ!!渚って演技上手くなったな?」


「えっ……?あ……うん……」


「昔から凄かったけど、今じゃその辺りの女優さんと比べても、いい線行くかもな?」


「そっかな?ありがとう」


全く違う話をされて、肩透かしを食らってしまう渚だった。