走り去っていく演技をした渚と、追いかけた紫音が、校門へと戻ってくる。


紫音は微妙な空気を感じながら、涙を拭っている渚に話しかけた。



「はい。ハンカチどうぞ」


「ありがとうございます。
私って泣きの演技得意なんですよ?」


渚は誰も聞いていないのに、泣きの演技が得意なんて言っていた。


紫音の方が好き。と思った矢先に、涼の言葉が心に刺ってしまった渚は混乱してしまう。


涼の顔を見て……


涼の声で……


どっちが好きなんだ?


なんて言われたら……


困っちゃうよ……


そんな渚を見て、複雑そうな表情の紫音は、何もなかったように話す。


「そっか。次の演技も頑張ろう」


泣いている女の子から、思いの丈を全部聞いてあげるのも優しさなら、触れないのも優しさ。