そんな渚の方をチラッと見た紫音はクスッと笑う。


「凄くいい雰囲気だったから。
アドリブで台本を変えちゃったんだよ
。監督も止めなかっただろ?」


万が一にも、よく少女漫画に出てきそうな、

お前が可愛くて、我慢できなかった。


なんて言葉もどこかで期待していたのに、仕事の為だと言われると、残念な気持ちになってしまう渚。


「そうですね?監督の思い通りの仕上がりになるなら、別に私は大丈夫です。
気にしてないので、紫音も気にしないでください。
これから帰り道のシーンの撮影が始まりますよっ?」


紫音から逃げるように、スタッフ達の元へと走っていく渚は、気にしないで?なんて言ったが、自分の方が意識してしまっていた。


恥ずかしくて……


紫音と一緒にいられなかった……


単なるお芝居なのに……


真っ赤に頬を染めて走る渚を、後ろから眺めていた紫音は、小さく一言呟いた。


「気にしないで……か……」


残りの撮影も無難にこなした二人だが、渚のドキドキは止まらないまま。